市間いおり新作動画(オリジナルソング)裏話

4月も終わらないうちに新作動画を公開することになるとは前の記事の執筆時点でまったく想定していない事態だった。我ながら何をやっているんだという感じだが、ネタを思いつくと形にしたい欲求が生まれてしまうのはしょうがない。

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というわけで、今回はオリジナルソング。折り紙をテーマにした楽曲は過去に(プロのアーティストによるものが)いくつも発表されているが、折り紙愛好家の心情についてここまで歌った歌はさすがにないんじゃないかしらん。
4/1の動画と同じくボイスチェンジャー他による女声化加工によるものだ。自分で言うのもなんだけど、4/1の動画と比較しても普通に可愛らしい声になっていると思う。本当に自分で言うのもなんだけど、元が43歳のおじさんとは思えない。とりわけ、ぼくと会って話したことのある人にとってはかなり面白いだろう。

(以下例によって長々と書いていくのでよほど興味のある人だけ読んでください)


DTMは20年程度細々とした趣味としてやってきた。だいたいにおいてシンセサイザーや波形編集による音作りや音の組み合わせ自体が楽しく、フレーズをループさせて足したり引いたりしながらテクノ風の曲を作りかけて途中で放置するのが常なのだが、歌モノも10数曲くらいは作ったことがある。と言っても楽器演奏にはほとんど興味がない(中学頃までピアノを習っていたが、今は全然弾けないと思う)。
4/1の動画のBGM制作のためにGarageBandを触ってみて、前の旧い環境では使えなかった音源などもいろいろ使えるし、懸案だったDTM環境ももうこれでいいかなとなった(ただし昔のデータは遺物と化す)。そんな折り、今回歌詞の英訳で協力してもらった森末さんとのやり取りの中で昔作ったとあるカラオケ音源にボイチェンしたボーカルをつけてみる遊びをしてみたところ、しゃべるよりも歌う方がずっとボイチェン適性が高いことが判明してしまって、すぐに市間いおりのオリジナルソングという案が浮かんだのだった。いきおい作詞・作曲自体は2日でできてしまったから怖い。
ネタとしてはもっといかにもなアイドルソング的な曲調にしてみたかったけれど、自分に作れるものというとこういう80年代のテクノポップ的なものになってしまう。まあ、ある程度作ってから自分が参照したものと思っていた曲群を聞いてみたら全然違う音だったりしたから、素人の限界と言ったところか。

折り紙大好き!



新しい一枚を手にとって 折り筋をつけるわ
先は長いから Ah 焦りは禁物
感じるテンション 答えは図の中
少しずつ進んでく


難しい工程でつまずいて でも不思議な形
もっと知りたいな Ah 不思議な世界
何度もチャレンジ ヒントは次の図
少しずつ分かってく


みんなが思うほど器用じゃないの
だけど伝えたいんだ 「折り紙大好き!」


“コンプレックス”だって“大事な自分”ね
“この気持ち”はいつだって“シンプル”よ


騒がしい日常を離れて 折り図に向かうの
もうすぐ仕上げね Ah 気合が入るわ
高まるテンション ボンドで押さえて
少しずつまとまっていく


みんなが思うほど器用じゃないの
だけど伝えたいんだ 「折り紙大好き!」
みんなが思うほど器用じゃないし
想いを折りに込めるよ 「折り紙大好き!」
みんなが思うほど器用じゃないの
だけど伝えられたら 「折り紙大好き!」

作詞はわりとすらすら言葉がはまってくれた。最初にサビを考えたのだが、直後にTwitterで「器用」についての話題が盛り上がっていたのはちょっとしたシンクロニシティだった。自分で説明するのは野暮だが、歌詞で言っている器用はコミュニケーション能力的なものとのダブルミーニングである。ABメロの歌詞は折り紙マニアが折り図を見て折っていく過程をなぞる構成にした。節ごとに連想や押韻をもとに言葉をはめていくのはパズル的で、折り紙の創作感覚にも通じるところがある。「テンション」のダブルミーニングや、「何度」「ヒント」「ボンド」の押韻なんかが気に入っている。
ボイチェンがよく効く音域の都合上、ABとサビが同じ調だとまずかったので、サビ前で無理やり転調させている。そこから3番に戻すためにDメロを入れたのだが、作曲作業ではここが一番苦労したところだ。普段の曲は転調とかしないし2コード・1コードとかで延々やる感じなので、そもそもコード進行については全く疎い。うまい人が聴けばもっといい進行の仕方があるかと思う。さらに、そこからのアレンジを詰めていく作業は大変で能力不足をひしひしと感じた。折り紙の創作時とは違って、バリエーションの可能性が発散していく感覚になってしまうのがつらくなってしまう原因なんだと思う(この辺は以前書いた「自由度の高い創作が苦手」という話と同じ)。
origamiplans.hatenablog.jp
ボーカルの録音は今回もiMacの内蔵マイク。セットアップとか何にも考えないで収録できるので助かる。問題は、あまり大きい声で収録できないので、どうしてもリップノイズが入ってしまうこと。無声子音などもピッチを上げると耳障りになりがちだ。これらの目立つところはなるべく編集して抑えたけれど、完全にはなくならない。ヘッドホンなどで聞くとアラがはっきり分かってしまうだろう。
パートごとにループ再生しながら複数テイクを収録し、それを切り貼りしてベストテイクを作っている。歌い方のニュアンスにばらつきが出てしまったが再現も難しいので細かい部分は諦めた。前述のノイズ処理は、ベストテイクのWAVを一度書き出して、波形が見やすいAudacityで編集している。
タイミング修正なども少ししてはいるが、多少ピッチやテンポが揺れてた方が素人感があって好ましいのでその辺はほどほどにした。


せっかくだからMVとは言わずとも簡単なリリックビデオ的なものを作って動画で公開したいなと思い、今回はiMovieじゃなくてDaVinci Resolveというソフトを導入した。フリー版でも相当ハイクオリティな動画制作ができるようで、実際あまりに多機能すぎて、欲しい機能を探すには検索しまくるより他なかった。
動画では初の全身イラストをキービジュアルにしたが、線画から色塗りまですべてAffinity Designerでマウスで作った(描くというより作るというのがしっくりくる)。ペンタブで自分で引くより断然キレイな線になる。プリーツスカートとか手とかの細かいところは手間がかかるし、トータルで比較して時間もかかるかもしれないけど、緊張して線を引かなくて済むのが助かる。たまにしか絵を描かないので人間の顔が全く安定して描けないもんだから、バランスの調整がいつでもできる点も良い。今回は斜めの顔ということもあって延々と顔パーツをいじっていた。
全身イラストはABメロに使い、サビ用には以前のイラストにマイクを描き加え、この2枚の静止画素材をもとに動画を作った。ほとんどスライドさせてるだけだが歌詞に合わせて演出をがんばったつもり。最後のサビの繰り返しでダレるので締めにはLive2Dのアニメーションパートを使った。
悔やまれるのは、動画をアップしてから、直したはずのミスを修正しきれてなかったことに気づいた(ABメロのとき背景がずれて左側が黒くなってるところ)。ツイートしてしまった後だったので泣く泣く諦めた。DaVinci Resolveだと作業画面が黒いので気づきにくいからだけど、YouTube上でちゃんと再確認しなかった自分が悪い。

以上、楽曲・動画あわせて制作期間はだいたい2週間と言ったところ。絵や動画は3日くらいなのでほとんど音楽のアレンジに時間を使った。当然この間ほとんど折っていないが、全く折っていないわけではない(自慢にならない)。


Your Fold


いつものように紙を折るキミの手を見ていた
静かに響く紙の音 踊るような指先


カドとカドを合わせて(中割り折り)
折り筋をよくつけて(沈め折り)
フチとフチを合わせて(つまみ折り)
反対側も同じ……


いつものように紙を折るキミの顔見ていた
静かに響く紙の音 隠すような微笑

さて、こういうときは使いきれないアイデアが出てくるもので、ついもう1曲(1番しかない短い曲だが)作ってしまった。こちらはオマケ曲として SoundCloudにアップした。対照的にしっとりした曲調にして、折り紙用語をそのまま入れた歌詞にしたかった。歌詞に登場する「キミ」は彼とも友達とも折り紙キッズともとれるような曖昧な感じにしているが、発想としては折り紙キッズである。もちろん好きに解釈してもらっていいけれど。折り技法を歌うコーラスパートは、偶然子供のような声になった。これに限らずちょっとした発声の違いで、異なる結果になって面白い。基本はGarageBandのVocal Transformerプラグインでピッチ・フォルマントとも5度上げている。ボイチェンした瞬間に、自分とは切り離された素材のように感じるのは面白い感覚だ。声の表す個性というのは強力なんだなあと実感する。


SoundCloudからはカラオケ含めて3曲、DLもできる。
市間いおりオリジナルソングス by Hideo Komatsu | Free Listening on SoundCloud
全身イラストもpixivに載せた。
www.pixiv.net