市間いおり動画制作裏話

去年のエイプリルフールにTwitterで「折り紙VTuber市間いおり」というネタを出した。架空のバーチャル・ユーチューバーの動画サムネイル風のイラストだ。「市間いおり」はもちろん「一枚折り」のダジャレ。

で、このイラストを描いているときに、来年は実際に動かして動画にできたら面白いだろうなあとぼんやり考えていた。その後パソコンを新調して実現可能な環境になったので、行動に移したというわけだ。

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エイプリルフールには過去にもオタク文化に絡んだネタを出してきたけど、今回はさすがにドン引きした方もいるかもしれない(ごめんなさい)。とは言え、この手の折り紙ネタ自体はいたって真面目な態度で作っている。まあ発想が明後日の方向なのは事実だけど。
以下、制作過程についてだらだらと書いていく。


使用したソフトは次の通り。
アバター作成>

  • FreeHand, Illustrator(主線作画)
  • FireAlpaca, Gimp, Gimp2(着色、PSD書き出し)
  • Live2D Cubism(アニメーション)

<ボイス素材>

<画像・字幕素材>

  • Affinity Designer

<BGM作成>

<動画編集>

市間いおりのイラストは基本的に昨年のものをそのまま使っている。内心、描き直してクオリティアップしたい気持ちもあったが、早くLive2Dを触ってみたくてぐっとこらえた。少し試してみて、目尻のデザインだけLive2Dで扱いやすい形に変えている。Live2Dのポテンシャルではもっと可動範囲を大きくできるが、顔の横方向の振り向きは難易度が高かったため、ほとんど動かさないようにした。
一般的に、VTuberとして配信をするにはLive2Dで作ったデータをFaceRigというソフトに読み込んで、ウェブカメラの顔認識でリアルタイムに動かす。問題は、FaceRigはMac版がないこと。ではどうしたかというと、実は今回の市間いおりの動きはぼく自身の動きをトラッキングしたものではなく、Live2Dのアニメーション機能を使って動かしている(見る人が見ればすぐ分かるだろう)。配信でなく動画だからこういう方法が取れた。リップシンク機能があったので、ボイス素材をまず作ってそれに合わせてアニメーションを作っていった。すべてを手付けモーションで作ったわけではなく、パラメータをランダムで動かす機能を使い、まとまった動きのパラメータを生成して切り貼りしている。表情だけはセリフに合わせて調整した。


そのボイス素材の方は、ぼく自身がしゃべったものをGarageBandのピッチ&フォルマントシフター(Vocal Transformerプラグイン)等で女性声に加工している。大概お聞き苦しいというか端的に不気味だろうとは思うが、お許し願いたい。当初はMac付属のテキスト読み上げソフトを使おうかとも思ったが、イントネーションなどの調整が大変そうなので見送り。有料の読み上げソフトはそれなりの値段がするし、さすがに一発ネタのために購入するのは気が引けた。
普段の声は低くガラガラしていて女声化に向いていないので、裏声ではないが多少高音めに発声をしている。マイクはiMacの内臓マイク。ノイズリダクションの作業を考慮し、Audacityで収録してデータを整えてからGarageBandに持ち込む手順としている。音声はもっと収録に時間をかけて行えば改善していくことは明らかだったが、まだ下流の工程がかなり控えてるのに変にこだわると完成が危ぶまれそうだったので、ある程度のところであきらめた。当たり前のことだがちゃんと活動しているVTuber/YouTuberの方々は滑舌がしっかりしてて喋り慣れている、それに引き換え……と痛感した。


もう一方のメイン素材である折り紙シミュレータの操作動画は、三谷さんがTwitterで紹介しているのを見て知った、d-origami.comを使用させていただいた。これをいじってみて、VTuberがバーチャルな折り紙をしているところってネタになるな、と思いついたのが今回の動画制作のきっかけだった。
このシミュレータは中割り折りに対応しているのだが、ピュアランドの方が無難だろうと思い、最初は「おすもうさん」を折るつもりだった。ところがこの作品は一旦折ったところをひらく作業が複数あるのと、紙の重なりが多いところがあって、これがシミュレータの誤作動を引き起こすようできれいに折り上げるのが難しいことが分かった。そこで「ピュアランド・ウィザード」に変更したのだが、こちらの方が折り数が多いにも関わらず、ちゃんと完成させることができたのは興味深い。ただし、シミュレータ独特の癖に対応するために、以前発表した折り図とはかなり工程を変えなくてはいけなかった。動画でも触れているとおり、この工程だとかなりずれやすい。最初の折り筋付けで上側にも22.5度の折り筋をつければ少し改善されるが、そこまでするとシミュレータで解説する意味が薄れてしまうような気がして、迷った末に対角線2本の折り筋のみにとどめた。一発ネタだし、チュートリアルとしての完成度は求めないつもりで作り始めたのだけど、記号や補足やらを足していると「やっぱりちゃんと折れる方がいいよなあ」と思えてきてしまう。この辺も少し心残りだ。


シミュレータを操作しているところを画面録画機能で撮影したものを、iMovieでボイス素材と編集し、全体の構成を決める。そのタイミング調整された音声だけを書き出してLive2Dで市間いおりのアニメーションを作成しブルーバック背景で書き出す(フリー版のLive2Dは透過背景の書き出しができないため)。そして折り方説明時に使う記号や字幕・背景の画像、BGM等と合わせて編集して、完成となる。ただしiMovieは動画と画像は合わせて2つの素材しか合成できないので、一旦シミュレーション動画と画像類を合成して、書き出してから再びアニメーションと合成するという手間が必要だった。
BGMも今回用にGarageBandで作った。昔に作った曲を元に打ち込み直しただけだが、自分の曲は基本的に暗くてリバーブやディレイをがしがし使う感じでBGMらしさに欠けるので、GarageBandのプリセット音源で多少チープな感じにしたかったのだった。BGMはフリー素材のものを使っても良かったから、これは完全に自己満足のため(この動画制作自体が自己満足ともいう)。


このような動画制作は初めてのことで、いろいろ調べつつの作業だった。役立つ情報を公開してくださっている方々に感謝したい。出来に関しては当然素人の域としても、ひととおり構想通りに進めることができ、無事にネタを成就できたのでよかった。市間いおりのキャラクターを使ったネタはまた思いついたらなんか作るかもしれないが、とりあえずは通常の折り紙活動に戻ることにする。

さて、この動画をちまちまと進めている間に、あやせましたさんがTwitterで気になるツイートをしていて、もしやと思ってDMで尋ねてみたところ予感的中で、彼も折り紙VTuberの計画を練っていたのだった。もっとも、ましたさんと僕とではコンセプトからして違うので、お互いに情報交換して安心したのだった。
ましたさんのチャンネルはこちら。受験で本格的始動は先になるとのことだが、期待したい。
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「折り線トポロジー」とは

前2つの記事で使っている「折り線トポロジー」なる用語は、例によってぼくが勝手に言っているだけなので使用には注意してもらいたいが、もう少ししっかりと、言わんとしている意味を説明しておこうと思う。


ここで言う「折り線トポロジー」とは、「ある作品を示した、山谷の区別のある展開図から、頂点の位置情報を捨象したもの(基本的には、平坦条件を満たした上で)」である。基本的には、ある折り紙作品に対応して存在する。

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なるべく頂点位置がぐちゃぐちゃになるようにしたもの
拙作「カエル」でやると、こんな感じになる。とは言え、図で表した時点で1つの固定された展開図になってしまうので、正しい概念としては図示はできない。頂点位置には無限の解があるので、それらをまとめて「ぐにゃぐにゃと動く展開図」のようなイメージになる。


トポロジーという概念は広くて、例えば神谷さんが今日の一言のコーナーで「インサイドアウト(技法)はトポロジー」と言っているのは、用紙フチに着目してその変形が模様を形作るというところを言っているのだろう。(最近MT777さんが関係するツイートを書かれていた
対して、ぼくの言っているのは、展開図を「路線図」のように捉えたもの、と言えば一番分かりやすいと思う(路線図はトポロジーの例としてよく挙げられる)。折り紙の数学でも、似たような概念が「折り線グラフ」などの名前で研究されているようだが、トポロジーとしたのは、グラフという言葉よりも、ぐにゃぐにゃと変形する感じがあるかなと思ったからだ。
数学用語を使いつつ、この概念は実のところ数学的には扱いづらいのではないかと思っている。というのは、記事で紹介した変形の実例でもやっているが、「頂点数・折り線の数(頂点の価数)を増減すること」が含まれているところだ。

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作品の同一性が認められれば、こういう変化もあり、にしたい
これを認めると理屈としてはどんな展開図も1つの折り線トポロジーから生成できてしまう(多分)。そこで制限として「ある作品を示した」というのが入っているわけだが、「作品(見立て)の同一性」というのを数学的に定義するのは難しいだろう(多分)。

さきほどのカエルの展開図も、「これはカエルなのか?」と思ってしまう人もいるかもしれない。作品の同一性とは一体なんなのかということは、いわゆる「アレンジ」などでも問題になったり、著作権などにも関わるが、折り紙者にとっても言い表すのはなかなか難題だ。
というわけで、概念としてはふわっとしたものなんだけど、折り線の連続的変化を折り紙作品に絡めて論じたい際に、何かしらの用語があると便利だなと思ったところから出てきた言葉だった。

円形用紙+11.25度系による習作「熊」

origamiplans.hatenablog.jp
折り線トポロジーの変形で遊んでみて、平面に面要素やカド要素を配置するという点では円形用紙の可能性も十分ありそうだなあと思えてきた。要するになるべく円に近くなるような展開図(折り線トポロジーの解)を目指すということだから、舘さんのOrigamizerによるスタンフォードバニーもイメージとしては近いと言えば近い。
なお円形用紙である程度の作品数がある人というとムジナ六郎さんがカップ麺のフタで折るシリーズを作っている。

折り線トポロジーを円形に変形させてみる

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自分でやってみたくなったのでリスの円形状用紙版を作ってみた。これもオリヒメ上で適当に折り線を引いていっただけなので完成度も何もあったものじゃないが、イメージとしてはこういう感じ。工程化可能だったら意外と有りな気もしてくる。
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こちらは円周に接する点は原子境界のみというマイルールを逆手に取ってより円形に近づけたバージョン(+後ろ足と尻尾のバランスをちょっといじっている)。


円形が用紙候補(=折り線トポロジーの配置対象)になりうるかということに対する1つの回答としては、「平面を構成する領域としてニュートラルだという意味を持たせられる」からというのが挙げられるだろう。形として特殊でないということだ。もちろん正方形と同様に「形そのものの意味」を強く持つ図形なので、所与の用紙形としての資格も十分にあるはず。
円形ならではの特徴をより具体的に言えば「用紙における辺とカドの扱いの差を取り払う」という意味が大きいのだろうと思う。逆に言うと折り線トポロジーの配置対象として正方形の面白いところは辺とカドの扱いの差にある。カド・辺・内部の1:2:4という比が、課題設定として絶妙にバランスが良い。用紙上のどこからも角二等分折りで45度系、22.5度系に発展できる。これが圧倒的に強い。
円形では(直径から直角をつくれるのを除けば)内部経由でしか角度系を取り出せないので、創作感覚で無限用紙と通じる部分もありそうだ。
Taonさんが指摘しているとおり円形で22.5度系だとそれは正八角形と同じだから、角度系なら15度か11.25度ということになるが、15度はともかく11.25度オンリーは難し過ぎる気がする。となると円形を生かすには自由角による構成が良さそうだ。
円形が完全にスタンダードになれば、正八角形構造を正方形から折ったりするのと同様に、正八角形構造を円形から始めても違和感は無くなるだろう。なんなら正方形作品を円形から折ったって構わない(!)。まあそこまで円形がスタンダードになるとはちょっと想像しにくいが。

円形用紙+11.25度系による習作「熊」

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円形用紙+完全11.25度系による習作「熊」。ちなみにオリヒメの推定図を描くために100角形でフチの線を描いている
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写真作例は折り紙用紙の裏に展開図を印刷して折っている
もう少し掘り下げてみたくなったので、動物作品を1つ作ってみた。そもそもは「狐」と「馬」の部分パターンを再利用しつつ作るつもりだったのだが、とっかかりの線で11.25度を使ったのをきっかけに全部11.25度系にしてしまおうといじり始めて別物になってしまった。
11.25度系にまともに取り組んだのもこれが初めてだが、Taonさんのいう「交点のニアミス」現象をこれでもかというくらいお見舞いされた。実際の紙を折っていたのでは気づかないような微小なズレの交点が頻繁に発生するので、精確に11.25度系でまとめるには製図ソフト無しには無理だと断言できる。
これもほぼオリヒメ上だけで創作したが、作図の作業は基本的に普段試行錯誤で折り線を探していく過程とほとんど変わらない(この辺の創作感覚についてはウェブサイト(折り紙計画 - 折り紙作品のできるまで:キリン編)に書いたことがある)。普段の22.5度系だと折った方が圧倒的に早く広範囲に候補検討できるものだから画面上だけで考えるのはちょっとまだるっこしい。自分の創作では思いつく範囲の候補を全探索する勢いで検討するのが常だが、これはもう熊っぽくなったところで断念してしまった。ゆえに習作扱いとなる。交点ニアミスも現象としては興味深いのだけど、行けると思ったら行けなかったという繰り返しもかなりしんどい。
さて作ってみて分かったのは、円形用紙と角度系は相性がかなり悪いということ。考えれば当たり前だが、角度系メッシュがちょっとでも細かくなると交点が円周上に乗らなくなるため円周上からカドが出しにくい。この熊も見てのとおり、円周付近はほぼ折り線を「逃がして」いる。折り線トポロジーが円に収まっているとは言え、これでは円形用紙の「辺と角の扱いの差を無くす」意味はほとんど感じ取れない。
11.25度系だとたまに円周上にニアミスする頂点が現れるから、誤差を許容するなら「円形用紙+11.25度系」の組み合わせも無くはなさそうだが、円形用紙では円周上にカドを配置して自由角で繋いでいく方が基本向いていそうだ。
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試作中に遭遇した11.25度系の円周へのニアミス
11.25度系の円周へのニアミスの例。後ろ足付近の2つの交点が一見円周に乗ってそうで外れている。Bは誤差が大きめだが、Aの方は折っても分からなそう。
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これは熊の折り線を構成する11.25度系メッシュの地獄のような図(一部線の伸ばし忘れがある)。これを描いたらオリヒメが異様に重くなった。


上で「円形用紙と角度系は相性が悪いのではないか」と書いたが、熊の展開図を眺めていたら、むしろその相性の悪さが却って「平面に広がる角度系メッシュを恣意的に切り取ってきた感」を感じさせて面白いかなとも思えてきた。折り線トポロジーと用紙境界が、お互い無関係で、それぞれ別の理で成立しているような感じ、と言って伝わるだろうか。


最後に、熊の作例を折るのに使った展開図のデータをPDFにしてアップしておく。興味のある人はどうぞ。
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そして、鶴田芳理さんが企画された不切正方形一枚折り以外の折り紙作品を集めた本『X ORIGAMI』に、この作品で参加した。主に展開図以降の仕上げ工程を折り図化したもので2ページというわずかなページでの参加だが、おそらく他にも面白い作品が集まっていると思うので、こちらも興味のある方はチェックしてみてほしい。発売は6月ごろになるそうだ。

連続的変化と折り線トポロジー


ろいろいさんの1・2枚目やはちけんさんの構造みたいなのは個人的には「折り線構造の連続的変化」と「外周部が折り畳み可能なら内部まで折り畳み可能」の合わせ技で理解している……とツイートしたところ、daidaiさんに「もう少し丁寧な説明を」とリクエストされたこともあって、ろいろいさんの例を少し詳しく書いてみた。Twitterには画像で載せたが、以下に高画質なPDF版をアップした。
drive.google.com

「折り線構造の連続的変化」の例としては、川崎さんの折り鶴変形理論や、「ぐらい折り」などもそうだ。以前このブログで紹介した「ATCのためのサンタ」のように、全体のバランスが変化するようなものもある。
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こう考えると、ある折り線のネットワーク構成(トポロジー)があったときに、角度系や格子点系あるいはバイパス系に乗るようなものは一種の「特殊解」と捉えることができそうだ。実際は折り畳み可能なままにぐにゃぐにゃっと角度や長さを動かせたりするわけだ(制限はあるけれども)。
そしてもしかしたらその中に造形的に素晴らしいバランスのものがあるかもしれない。このことは、仕上げ折りをするときに「どうしてもぐらい折りじゃなきゃダメだ!」というようなケースを想像すれば理解しやすい。
特に22.5度系は神がかったバランスとは言え若干制限が強めだから、単純蛇腹が神谷パターンの発見によって格子点系に発展したように、部分的にでも11.25度系やバイパス系を取り入れて自由度を上げたスタイルを積極的に採用する人が今後増えていくような気がする。

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左はオリジナル、右が11.25度系に変形したもの
具体例があると面白いかなと、連続的変化を技法的に使って「おんどり」を11.25度系に改造してみた。オリヒメ上で展開図を平坦条件を満たすように折り線をいじっただけで、実際に折って作ったものではない(以下の例も同様)。
この例では見ての通り造形バランスはひどいものだが、もっと良い造形があるかもしれない。もっともシンプル作品では造形的な制限が見立ての強度になってくれるので、「おんどり」の折り線トポロジーにオリジナル(22.5度系)を超えるようなバランスが存在するかは疑問だ。
「おんどり」の例は変化としては単純なものだが、もっとコンプレックスな作品でも同様の操作で造形バランスの調整を行うことは可能だと思われる。円領域分子法で作った変則角の多い展開図を22.5度系にするなどの「洗練化」技法の逆方向のようでちょっと面白い。

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もう少し複雑な例として「リス」の改造もしてみた。左はオリジナル(『小松英夫作品集』版)、右が内部構造をバイパス系にして頂点数を減らしたもの。ほとんど見た目は変わらないが胸の毛が増してなかなか悪くなさそう。折ってみると、工程もほとんど変えずに折れてなかなか良い。尾の根元の上部分にちょっとフチがはみ出すのだけ惜しい。

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さらにいじった例。何かしら作図上の基準が欲しいので11.25度の変形から手をつけているが、バイパス的に繋げていくうちに混沌としてきてなんだかよく分からなくなってくる。


MT777さんの「#折紙設計の理論と応用_平成31年度版」でも実例が示されている多値的設計法というか面配置設計法に習って、リスの造形のコアを取り出すと次のようになる。
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この部分に注目してうまく変形していけばいいと分かってはいるものの、なかなかコントロールするのは難しい。ソフトを使っているとは言え変形してくのは手作業だからそのせいかもしれないし、単純に自分がまだ不慣れだからかもしれない。
後は、自分にとっての折り紙造形というものが22.5度系に親しみ過ぎていて、どういじっても違和感が凄い。
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というわけで今回のパターンから発想してオリジナルとは別の22.5度系の内部構造も作ってみた。尾の仕上げの内側でつぶす折りで少々厄介なことになるが、腹の部分のヒダが増えることで後ろ足の形状保持力が少しアップするようだ。ただし、折りやすい工程はすぐには見つからなさそうだった。


多値的自由角系の作風を先取りしていた作家というとやはり吉野一生さんだが、この手法で吉野作品みたいな作品が作れるかは微妙かもしれない。なぜなら、この手法では工程化不可能な展開図が大量にできてしまうことが予想され、試行錯誤で見つかるものとはちょっと違うとも思えるのだ。実際に折る試行錯誤だと、自然と折りやすい(というか「工程を伴う」)パターンにフィルタリングされるだろう。
あと、こうやって折り線トポロジーをいじっていると、確実に「用紙境界が正方形である意味は無いな」と思えてくる。主体はトポロジーであって、角度の縛りとして22.5度を選べば選択肢に正方形が入ってくるが、自由角なら自由角形が当然になってくる。
この辺も円領域分子法のころから分かっていたことだが、多値構造だとさらにタガが外れる感じだ。突き詰めていけば「カドなんて用紙境界にある原子そのもので作っちゃえばいいじゃないか」と「切り折り紙」的なものに接近していくだろう。
折り線トポロジーを所与の用紙形から生じるものとする見方と、折り線トポロジーがまずあってその変形によって用紙形が生じるとする見方は、折り紙観としてかなり違うかもしれない。同じ変則用紙でもティーバッグ折り紙は前者だし、折り鶴変形理論は後者寄りだ。
いじろうと思えばいくらでもいじれるし、どんどん「良い造形バランスとはなんだ」「22.5度ってやっぱりキレイダナー」みたいになってくるし、多値自由角系を覗いてみたらそこはなかなかに魔界のようだった。

(2019/4/16, 19, 21のツイートに加筆修正)