「アメリカンコッカースパニエル」

American Cocker Spaniel
2020年7月創作
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アメリカンコッカースパニエルの折り紙というと『神谷流 創作折り紙に挑戦!』に収録されている神谷哲史さんの作品が有名だろう。同作品は毛をカットした姿を折っていたため、長毛の姿を折ってみたらどうかと考えた。毛の表現は継続的に取り組んでいるテーマだが、この題材を折ってみようと思ったのは数年くらい前のことだ。
最初に浮かんだアイデアは「平行に細かく中割り折りした構造を曲面状に半開折りにする」という、「双曲放物線面」で見るアレをうまく使えないか?という発想だった。予想に難くないが、結果からいうと一枚折りでは紙の厚みの問題から実現が難しいものだった。造形的には面白くなりそうな気配はあるので、切り折り紙的な手法なら形になるかもしれない。


最終的には、バラバラに試作していた顔と胴体のパーツのアイデアを用いて形になったのだが、「パーツそのものがあって、それを繋いだ」というよりは「見立て」を含んだ造形・構造の試作アイデアを適宜変化させつつ再利用するというような感じだった。Twitterで一旦公開した後に耳を改良しているが、これもすでにあった頭部試作の構造は変えてデザインだけを組み入れて形になっている。


ある程度構造がまとまってきた段階で、その構造が以前に記事にした「折り線トポロジー」的な展開ができるものであることに気づいた。つまり犬の見立てを得られるような無限の比率的なバリエーションが存在する。
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ORIPAやオリヒメで展開図を描きつつ創作を進めていく方法になってから、この連続的変化を意識して煮詰めていくということが多くなった。昔は感覚的にやっていたが、それゆえの見落としがあったと思う。
造形バランスを吟味して、一度Twitterでかなり込み入った比率のものを発表したのだが、この後折り図を制作する段階で思い直して、折り出しやすい比率(それでも作図的な折りが必要だが)に変更した。f:id:origami:20210426224225j:plain
微妙な差ではあるが、前の方が若干頭の位置が高くなる。実際に飼っている愛好家から見たらどうなのかは分からないが、ぼくとしてはbeforeの方が造形的にはベターに見える。構造・工程としてはもちろんafterに軍配が上がる。

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基本構造の展開図を構成するメッシュ(=線を端まで伸ばしたもの)。beforeは離れた線と線が繋がっていないケースがあり、多くは折りにくさを生む


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