「折り線トポロジー」とは
前2つの記事で使っている「折り線トポロジー」なる用語は、例によってぼくが勝手に言っているだけなので使用には注意してもらいたいが、もう少ししっかりと、言わんとしている意味を説明しておこうと思う。
ここで言う「折り線トポロジー」とは、「ある作品を示した、山谷の区別のある展開図から、頂点の位置情報を捨象したもの(基本的には、平坦条件を満たした上で)」である。基本的には、ある折り紙作品に対応して存在する。
拙作「カエル」でやると、こんな感じになる。とは言え、図で表した時点で1つの固定された展開図になってしまうので、正しい概念としては図示はできない。頂点位置には無限の解があるので、それらをまとめて「ぐにゃぐにゃと動く展開図」のようなイメージになる。
トポロジーという概念は広くて、例えば神谷さんが今日の一言のコーナーで「インサイドアウト(技法)はトポロジー」と言っているのは、用紙フチに着目してその変形が模様を形作るというところを言っているのだろう。(最近MT777さんが関係するツイートを書かれていた)
対して、ぼくの言っているのは、展開図を「路線図」のように捉えたもの、と言えば一番分かりやすいと思う(路線図はトポロジーの例としてよく挙げられる)。折り紙の数学でも、似たような概念が「折り線グラフ」などの名前で研究されているようだが、トポロジーとしたのは、グラフという言葉よりも、ぐにゃぐにゃと変形する感じがあるかなと思ったからだ。
数学用語を使いつつ、この概念は実のところ数学的には扱いづらいのではないかと思っている。というのは、記事で紹介した変形の実例でもやっているが、「頂点数・折り線の数(頂点の価数)を増減すること」が含まれているところだ。これを認めると理屈としてはどんな展開図も1つの折り線トポロジーから生成できてしまう(多分)。そこで制限として「ある作品を示した」というのが入っているわけだが、「作品(見立て)の同一性」というのを数学的に定義するのは難しいだろう(多分)。
さきほどのカエルの展開図も、「これはカエルなのか?」と思ってしまう人もいるかもしれない。作品の同一性とは一体なんなのかということは、いわゆる「アレンジ」などでも問題になったり、著作権などにも関わるが、折り紙者にとっても言い表すのはなかなか難題だ。
というわけで、概念としてはふわっとしたものなんだけど、折り線の連続的変化を折り紙作品に絡めて論じたい際に、何かしらの用語があると便利だなと思ったところから出てきた言葉だった。