無許諾折り方動画と、折り図で作品発表するということ


YouTubeに代表される動画サイトにおいて"創作者の許可なく"公開されている折り方動画(チュートリアル動画)については、いつか何かしら触れなければならないなあと胸の片隅にあった。
自分の作品も無断チュートリアル動画があって、何かの拍子に見かけると良い気分にならないから、YouTubeの折り紙関連動画を自分から検索して探すことをあまりしなくなってしまっていた。


小松本の前書きにも書いたことだが、自分は折り図という伝達手段に愛着があり、意図をもって選択している。折り図を通して折り手と繋がることが、ぼくの折り紙活動の理想型と思っている。対面コミュニケーションであるリアル講習には苦手意識があるし、本というメディアを介すくらいが距離感として丁度良いのだ。
動画もメディアを介してはいるけど、折り図よりは生身の自分が出てしまうので乗り気になれない。アトピー持ちだから自分の手を映すことにためらいがある(仮に自分がチュートリアル動画を作るとしたらアニメーションでやってみたい笑)。


現状ある無断動画については、コンプレックス系に限って言えばその多くが海外ユーザがやっているようで英語が苦手な自分にはやり取りのコストが大きいため、これまで特にアクションを起こしてこなかった。そもそも著作権で制限できるのか法的解釈の問題もあり、実際創作者がYouTubeに申告しても受理されなかった事例を話に聞いている。(個人的には「折り紙作品の再現=複製」説を取るので、チュートリアルも複製権・翻案権に抵触するはずだと考えている。これはおそらくJOASもそのような見解だと思う。いずれにせよ、創作者の成果に対するフリーライド行為には違いない)


ぼくが折り図で折り手と繋がりたいというのは、突き詰めればぼくのワガママであるから、「動画の方が分かりやすいから動画を出してほしい」「直接教えてほしい」という折り手側の声があるとしたら、それもまたもっともなことだとは思う。実際問題そういう需要があるからチュートリアル動画が(創作者自身が公開・公認している正規版も含め)多くアップされているのだろうし、有澤さんも書いているが無料で見られる動画が新規愛好家の参入やスキルアップに寄与している側面もある。
そんな中で動画を選択しない立場を取る以上「チュートリアル動画より作者の折り図で折りたい」「折り図の方が分かりやすい」と折り手に思ってもらえるものを出さねばということを意識してきた。ぼくにとって動画は(加えるなら写真折り図や展開図も)「良きライバル」みたいなものだ。少なくともぼくの描く折り図には、単にその作品の折り方を示す以上の意味と期待が込められていて、折り図を通してしか得られない体験・時間があるはずだということを信じている。幼少の頃、折り紙本をひらくとずらりと並ぶ図に胸が躍った、それが今の活動に至る原体験なのだと思う。
おそらくは、動画で育って動画を好む愛好家が今後増加していくのは間違いない潮流だろうし、折り図や物理本への愛着もアナクロニズムになっていくのかもしれないが…。


なんだか無断動画の是非というより折り図vs動画というような話になってしまったが、動画で発表している作家の方とて作品を無断使用されることもあるだろうし、オリジナルソースへの導線がユーザーに伝わりにくいのは折り図でも動画でも同様だろう。折り紙の世界だけでなく、一般の人にとっても、「折り紙作品には作者がいて、作者自らが発信/公認した情報が何より優先して流通されるべきだ」という認識が広まっていってほしい。

(2019/2/23のツイートに加筆・修正)