円形用紙+11.25度系による習作「熊」

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折り線トポロジーの変形で遊んでみて、平面に面要素やカド要素を配置するという点では円形用紙の可能性も十分ありそうだなあと思えてきた。要するになるべく円に近くなるような展開図(折り線トポロジーの解)を目指すということだから、舘さんのOrigamizerによるスタンフォードバニーもイメージとしては近いと言えば近い。
なお円形用紙である程度の作品数がある人というとムジナ六郎さんがカップ麺のフタで折るシリーズを作っている。

折り線トポロジーを円形に変形させてみる

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自分でやってみたくなったのでリスの円形状用紙版を作ってみた。これもオリヒメ上で適当に折り線を引いていっただけなので完成度も何もあったものじゃないが、イメージとしてはこういう感じ。工程化可能だったら意外と有りな気もしてくる。
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こちらは円周に接する点は原子境界のみというマイルールを逆手に取ってより円形に近づけたバージョン(+後ろ足と尻尾のバランスをちょっといじっている)。


円形が用紙候補(=折り線トポロジーの配置対象)になりうるかということに対する1つの回答としては、「平面を構成する領域としてニュートラルだという意味を持たせられる」からというのが挙げられるだろう。形として特殊でないということだ。もちろん正方形と同様に「形そのものの(文化的)意味」を強く持つ図形なので、所与の用紙形としての資格も十分にあるはず。
円形ならではの特徴をより具体的に言えば「用紙における辺とカドの扱いの差を取り払う」という意味が大きいのだろうと思う。逆に言うと折り線トポロジーの配置対象として正方形の面白いところは辺とカドの扱いの差にある。カド・辺・内部の1:2:4という比が、課題設定として絶妙にバランスが良い。用紙上のどこからも角二等分折りで45度系、22.5度系に発展できる。これが圧倒的に強い。
円形では(直径から直角をつくれるのを除けば)内部経由でしか角度系を取り出せないので、創作感覚で無限用紙と通じる部分もありそうだ。
Taonさんが指摘しているとおり円形で22.5度系だとそれは正八角形と同じだから、角度系なら15度か11.25度ということになるが、15度はともかく11.25度オンリーは難し過ぎる気がする。となると円形を生かすには自由角による構成が良さそうだ。
円形が完全にスタンダードになれば、正八角形構造を正方形から折ったりするのと同様に、正八角形構造を円形から始めても違和感は無くなるだろう。なんなら正方形作品を円形から折ったって構わない(!)。まあそこまで円形がスタンダードになるとはちょっと想像しにくいが。

円形用紙+11.25度系による習作「熊」

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円形用紙+完全11.25度系による習作「熊」。ちなみにオリヒメの推定図を描くために100角形でフチの線を描いている
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写真作例は折り紙用紙の裏に展開図を印刷して折っている
もう少し掘り下げてみたくなったので、動物作品を1つ作ってみた。そもそもは「狐」と「馬」の部分パターンを再利用しつつ作るつもりだったのだが、とっかかりの線で11.25度を使ったのをきっかけに全部11.25度系にしてしまおうといじり始めて別物になってしまった。
11.25度系にまともに取り組んだのもこれが初めてだが、Taonさんのいう「交点のニアミス」現象をこれでもかというくらいお見舞いされた。実際の紙を折っていたのでは気づかないような微小なズレの交点が頻繁に発生するので、精確に11.25度系でまとめるには製図ソフト無しには無理だと断言できる。
これもほぼオリヒメ上だけで創作したが、作図の作業は基本的に普段試行錯誤で折り線を探していく過程とほとんど変わらない(この辺の創作感覚についてはウェブサイト(折り紙計画 - 折り紙作品のできるまで:キリン編)に書いたことがある)。普段の22.5度系だと折った方が圧倒的に早く広範囲に候補検討できるものだから画面上だけで考えるのはちょっとまだるっこしい。自分の創作では思いつく範囲の候補を全探索する勢いで検討するのが常だが、これはもう熊っぽくなったところで断念してしまった。ゆえに習作扱いとなる。交点ニアミスも現象としては興味深いのだけど、行けると思ったら行けなかったという繰り返しもかなりしんどい。
さて作ってみて分かったのは、円形用紙と角度系は相性がかなり悪いということ。考えれば当たり前だが、角度系メッシュがちょっとでも細かくなると交点が円周上に乗らなくなるため円周上からカドが出しにくい。この熊も見てのとおり、円周付近はほぼ折り線を「逃がして」いる。折り線トポロジーが円に収まっているとは言え、これでは円形用紙の「辺と角の扱いの差を無くす」意味はほとんど感じ取れない。
11.25度系だとたまに円周上にニアミスする頂点が現れるから、誤差を許容するなら「円形用紙+11.25度系」の組み合わせも無くはなさそうだが、円形用紙では円周上にカドを配置して自由角で繋いでいく方が基本向いていそうだ。
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試作中に遭遇した11.25度系の円周へのニアミス
11.25度系の円周へのニアミスの例。後ろ足付近の2つの交点が一見円周に乗ってそうで外れている。Bは誤差が大きめだが、Aの方は折っても分からなそう。
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これは熊の折り線を構成する11.25度系メッシュの地獄のような図(一部線の伸ばし忘れがある)。これを描いたらオリヒメが異様に重くなった。


上で「円形用紙と角度系は相性が悪いのではないか」と書いたが、熊の展開図を眺めていたら、むしろその相性の悪さが却って「平面に広がる角度系メッシュを恣意的に切り取ってきた感」を感じさせて面白いかなとも思えてきた。折り線トポロジーと用紙境界が、お互い無関係で、それぞれ別の理で成立しているような感じ、と言って伝わるだろうか。


最後に、熊の作例を折るのに使った展開図のデータをPDFにしてアップしておく。興味のある人はどうぞ。
drive.google.com

そして、鶴田芳理さんが企画された不切正方形一枚折り以外の折り紙作品を集めた本『X ORIGAMI』に、この作品で参加した。主に展開図以降の仕上げ工程を折り図化したもので2ページというわずかなページでの参加だが、おそらく他にも面白い作品が集まっていると思うので、こちらも興味のある方はチェックしてみてほしい。発売は6月ごろになるそうだ。