小鳥の基本形とその周辺

おりがみ新世代で座布団小鳥の基本形からの作品作りが盛り上がり、お題板史上最多投稿数となっている。ぼく自身も「にわとり」ができたし、その後も少し試みて正規作品とは扱えないが動物のかたちをいくつか取り出せた(これは後日紹介したい)。
偶然にも、笠原さんの新刊『動物折り紙BOOK』に載っていた作品の多くが小鳥の基本形から折られていて、何か「小鳥の基本形」が来てるのかもしれない。というわけで、この機会に「小鳥の基本形」の基本形としての展開についてまとめてみることにした。

小鳥の基本形



本などで小鳥の基本形として紹介されるのは図のBが多いような印象があるがAのかたちも見かける。伝承作品を折るための途中形というならBの山谷違いのCなわけだが、応用性はBより低くなると思われる。
以前羽鳥さんに教えていただいたところによると、海外では基本形(base)としてあまり知られていないそうだ。日本でもどちらかと言えばマイナーではある。

さて、この基本形の最大の特徴はやはりその独特の形状にある。一見して葉っぱのような形だが、それ以外のさまざまなイメージも受ける。他の伝統的な基本形と比べてもその「見立てポテンシャル」は高い。これは折り紙原子となる多角形の種類が比較して多いためだろう。

この形状を折り線構造で見てみると、凧型一値分子が開く形に折られることで、二値性を持つ形状に変化していることが、全体の形状の特徴を決めている要因と分かる。辺に垂直な折り線を持たない一値分子の特徴だ。

試しに、全体を一値性(一軸性)を持つ形状に折り変えてみると見立て度が落ちたような気がしなくもない。とはいえどちらの形も小鳥の基本形同様に応用できる(Bの例として前川さんの「りす」@ビバ)。

他によく使われるのが沈め折りだ。古くは桃谷さんの「りす」@折り紙入門の例があるが、細くなったカドが新たなイメージを喚起する。前川悪魔の胴体〜手にかけての見立ても言ってみればこれである。
これらの二次的な加工は、以下で記しているそれぞれの展開でも同様に扱える。

座布団小鳥

伝承基本形を座布団折りをしてから折る技法として、座布団魚、座布団鶴、座布団アヤメ(=4鶴)などの基本形がよく知られているが、小鳥の基本形で折ると以下のようになる。

作例としては、なんと言っても前川さんの「羊」。おりがみ新世代の今回の投稿からも、かなりのポテンシャルを秘めているかたちと言えそう。座布団魚の基本形と折り比べてみると、対称性のくずれがイメージを誘発する効果を生んでいることが分かるだろう。

二重座布団小鳥〜額縁小鳥

座布団折りを繰り返すとより複雑な基本形となる。小鳥の基本形でやってみると、実際使いやすそうなかたちとしては次のようなものに落ち着く。

こう見るとむしろ「にそう舟小鳥」と言った方がいいかもしれない。ということは、つまり「額縁小鳥」の特殊解として考えられる。ではこれよりも額縁の幅として適しているのは次の図だろう。

額縁小鳥の延長線上にある例として、ぼくの「日本猿」を挙げる。これは用紙9等分の中心の正方形に小鳥の基本形が入っていて、用紙周辺部の構造が大きくそれに引きずられている。あくまで結果としての構造だが、この展開図に面白みがあるとすれば、それは小鳥の基本形の性格に多くを依っている。

付加小鳥(仕込み小鳥)

額縁小鳥から連想的に、用紙の2辺に領域を付加した構造が考えられる。22.5度のメッシュを考えて幅を決め、展開図の整合性を確保する。額縁同様、とれる幅はいくつも考えられるが、ここでは使えそうな3つの例を挙げる。付加した部分の処理もあくまで1例。

Bの例として、笠原さんの「うたうカナリヤ」@『最新折り紙小百科』。また川畑さんの「トロエドン」@をる、もBからの発展として見ることができる。

ずらし座布団小鳥

座布団小鳥をしばらくいじっていると、左右に出ているカドの位置が辺の中心に固定されてることで、マンネリ感を感じてくるかもしれない。となれば、配置をずらしてみよう。

同じく3つの例を挙げる。A, Bは上方向に、Cは下方向にずらしたもの。ぼく自身まだいじってみてはいないが、どれも少なくとも座布団小鳥と同等のポテンシャルを感じさせる魅力的な形状をしている。

4小鳥


4鶴があるのだから4小鳥もあっていい。小鳥は向きがあるので、パターンとしては6つ考えられる。
ただ実際に折ってみるとそれなりに面白いものの、新中人さんも書いているとおり、感覚としてはあまり扱いやすくない。カドの数が増えることで、カド優先として使い方をせざるを得なくなり、元々の小鳥の持っている「面」からのアプローチがしにくくなるせいかもしれない。
小鳥の凧型分子が分子団に変化してるものの、目黒さんの「ザリガニ2」(「アゲハチョウ」)が、Aの配置を発展させた例として挙げられる。上記のとおり、カド出しに寄ったアプローチとなっている。

9小鳥

9鶴があるのだから…………。
さらにややこしい上にむくわれなさそうなので折ってみてない。具象的なものが折りにくいかわりに、コラゲーション方面の興味を満たすものになる、かもしんない。

補足

何か見落としてるかもしれないが、基本形の応用展開としては大体これくらいで基本をカバーしてるのではと思う。なおそれぞれの名称は、内輪的慣習的な語法をそれなりに踏まえてはいるが、大体が勝手につけたものなので人前での使用には注意されたい。自分としては「付加小鳥」の名称はちょっと変かも、と思ってる。というのは、技法として大きく捉えると、どれも「付加法」のバリエーションと言えるだろうから。
さておき、座布団小鳥で遊び足りなかった人は付加小鳥やずらし座布団小鳥で遊ぶといいと思います。ぼくもそうしよう。
(2/3 文章をちょっと追加)