「F/A-18 ホーネット」を折る



折紙探偵団』102号より、吉野一生さん作・宮島さん折り図。
校正のときに2回試し折りしたので、本誌が届いてから折ったこれが3回目となる本番折り(もっとも最初のは15cmおりがみで折って途中で投げ出したんだけど。2回目は24cmおりがみ)。


試し折りの時の様子を書いてみるならば、出だしは明確な基準ですすむので、吉野モデルにしては折りやすいじゃん?とか思っていると、大体50前後から雲行きが怪しくなってきて56・57で思わずうめき、追い討ちをかけるように59が崩壊を決定付ける‥‥出だしで丁寧ーに折り筋をつけていたのがまるで無駄になっていくことに悲しくなりつつ、以降はもう何をどう折ってるのかよく分からない状態のまま完成するといった感じだった。一言で言うと難しい。


というわけで、3回目は事前に対策を練った。紙の厚みによるズレが不安を掻き立てるので、ORIPAで正確に展開図を描いてみて各工程でチェックするという神経質なことをしてみる。宮島さんの図を信用しないわけじゃないけど、試し折りの時は図との違いに翻弄されたので‥‥*1。特に知りたかったのは56でつける折り線の位置だ。

 で、その後アンドレ80kgの40cm弱で、3時間かけて真面目に折ったのが写真のもの。まあ、ちゃんと折れてる‥‥と思う。実にかっこいい造形で、いろんな角度から眺めたくなる。


 さて、以下にはぼくが折りながら気をつけたポイントを書いてみようかと思う。折ってみたけど、うまく折れない、という人は参考にしてみてください。


・当たり前だけど最初の折り筋は正確に。
・21・22はずれやすいのでカドを一旦開いてから、それぞれ2回に分けて折る。これらの折り筋は、斜めの折り筋のほんのちょっと手前くらいで交わる。
・24には別の基準を発見*2。23の状態で裏側にあるコックピットのフチの近い方に合わせる。幾分折りやすい、かな?
・26も直角のところが斜めにずれやすいので25の状態でつける。
・28も一旦開いてつける。
・32はいきなり折り返さずに、最初に下の方を折り上げてから降ろす方がずれにくい。
・46の形は、袋部分の先がほんの少し隠れてて良い。
・47はあらかじめ22.5度のアタリの折り筋を軽くつけて、正確に11.25度で折る。
・56は、上の方の幅が太い。下の幅が上の幅の3/4強くらい。63、64の図が正確なので参考に。
・一度60→62とちゃんと折ってから、61の中割り折りをする。
・66がおそらく本作最大の悩みポイントではないか。多分上記のとおりに折り進めてくると、65を折るとつっかかってしまって折り畳めない!ということになるはず。ここで63、64の位置を変えたら畳めるようになるかな?と思うのは間違いで、71を見れば63の線が水平尾翼の後ろのラインを作っている大事な線ということが分かる。そして65の折りを68で位置を変えてしまうことから、65・66は67のかぶせ折りをするために折っていることが分かる。つまり車輪カド付近だけ折れてればいいので、65で持ち上がるフチのところはこの段階で折り畳む必要はなし。最後の最後に尾翼を広げるときに中割り折り的に折れば問題ない。
・67のかぶせ折りは、実際は少しフチのところで紙があまる感じでゆがみが出るが、たいした問題にはならないので適当にごまかす。
・68・70・71あたりは図におけるカドの位置を参考に折って何の問題もなさそう。68のずらし具合については、70で尾翼に出るラインが平行*3になるよう気をつけるのと、90の折りを視野に入れて折るのが吉。
・71〜84の車輪パートは多少ずれても、最終的に車輪さえ出れば問題なし。ただし左右対称に折るには、適宜、左右同時進行で折った方が良い。
・93はひっかかるポイントくらいで折ると、94はついている折り筋で畳める(と思う、この辺から段々自信なくなってくるけど)。
・当然仕上げは、前輪だけでなく全体的にがんがん糊づけする。

と、以上のような感じで折った。
ずれにくい折り筋の付け方とかをちょっとしつこく書いてしまったけど、一般的に「図にある記号とは違うが、同内容でより精度の高い折り方を探して折る」というのは、折り紙作品を綺麗に仕上げる上でとても大事なので、教材的に書いてみた。例えば、図では「山折り」で書いてあるのを、折るときには「ひっくり返して谷折り」するとかは誰でも無意識でやったりするだろうけど、それをもっと意識的に行うと良い。


念のため付け加えておくが、上で紹介してるのはあくまで紙の厚みを無視した場合の位置を「仮の正解」として基準と見なしたものだ。実際は紙の厚みは無視できないし、どうしてもずれたりする。が、吉野作品のようなスタイルの折り紙では、ずれたら間違いというわけではない。むしろ吉野さんが折るときには、あちこちで意図的なずらしを入れたりしていただろう。もしかしたら序盤から少しずらして折って、66もちゃんと畳めたりしてたのかもしれない。
今回のは、「仮の正解」に沿って折ってみたら、まあまあきちんと折れたよ、ということで紹介したにすぎないので、その辺誤解しないようにお願いします。
要は最終的にカッコ良く折れればそれが正解かつ正義!ということ(笑)。


それにしても、こんなぐらい折りや不思議角度だらけで立体工程も多いモデルの作図をした宮島さんの苦労がしのばれる。これは本当に大変な作業ですよ。吉野さんの原図(これはこれで異常に綺麗な手描き図だったけど)も見せてもらったけど、もっと図の数少なかったしね。

*1:結果的には折り図は相当正確な比率だった。さすが

*2:本当に正確かは計算してないので分からないけど、ORIPAの長さ測定では同じ数値だった

*3:なんてことは一言も指示されてないけど、その方がきれいでしょ、という判断