宮島さんの「日本猿」評

 まずはこうして自作品へレスポンスを下さったことにお礼を。

65〜68図や102〜107図あたりの、一度開いて折り線をつけてたたみ直す工程は、まさに"小松節"って感じです。

 ぼくとしては意外な感じかな。これらの工程は以前なら「禁じ手」として採用をためらっていた工程ですね。先のエントリで書いたように、今回は折り応えを増すことを考え、変則的なステップを意図的に混ぜ込んだつもりです(そういう工程が素直に出てきたという面もありますけど)。

見た目がシンプルなら簡単な作品だという軽い気持ちで折り始めるでしょうし、見た目が複雑なら、それなりの覚悟で折り始めるでしょう。小松さんの作品を軽い気持ちで折り始めて、面食らう人もいるのではないでしょうか。

 これは確かに痛いところです。コンベンションの教室でも、「小松作品は折りにくい」という意見をいただいて、その時は「えっ?」と思ったのですが、後で考えれば「見た目に比較して」ということなのだろうと分かりました。
 しかし、似たような形をもっと簡単に折れるならば問題ですけれど、ぼくはそうは思っていないので、「折り紙で造形するというのはこういうものなのだ」としか言えないような気がします。

小松さんは、その対象の選択や折図の丁寧さからわかるように、自分の作品を内輪受け、マニア受けに終わらせずに、人口に膾炙(?)させようという意識も持っておられる方です。

 ありがたい評価です。でも実はその辺はあまり考えてません。むしろぼくは今まで「マニア向けに作っている」ことを発言してきましたし、実際そうなのだろうと思います。
 「対象の選択」については、「折り紙で動物を作ること」に手法的な利点を見出しているからですし、「折り図の丁寧さ」もあくまで折り工程の流れに集中してもらうためです。折り図は丁寧に描けば初心者が折れるようになるかと言うと大して変わらないんじゃないでしょうか。
 また、ぼくとて「見た目重視」には変わりなく「デザインのシンプル化」は言ってみればそういうことです。不要な線は断固として不要なわけで、妥協も基本的にはありません。
 そういうわけで、初心者に向けて意図的に難度を下げることは、そういうオファーでも来ない限りはしません。

でも、どうも今回の作品は(あえて言えば前作の「犬」も)「虻蜂取らず」になっているような感じがしました。

 結論から言えば、宮島さんを満足させるだけの仕掛けを盛り込めなかったということで、「マニア向け」としては成功しなかったのでしょう。しかし「宮島さんを満足させる」というのも大変なハードルなので、あまりガッカリはしてません(笑)。