「折り紙大好き!」UTAU(ORIGAMI-I)バージョン
UTAUと聞いて大貫妙子?という人もいるかもしれないが、ここでは歌唱合成ソフトの方。
ja.wikipedia.org
詳細はWikipediaに投げるとして、声の断片をライブラリ化してソフト上で配置・調整することで歌わせることができるというもので、いろいろな人による音声ライブラリ(多くはキャラクター化されている)が配布されている。
dic.nicovideo.jp
前のDTM環境では、歌モノはAquesToneというプラグインを使って作っていた。UTAUも使おうとすれば使えたはずだが、ソフトを単体で立ち上げるUTAUと違ってAquesToneは作曲ソフト上で打ち込みができるので、こっちを使っていたのだったと思う。
話をUTAUに戻して、先日daidaiさんが折り紙にちなんだUTAU音声ライブラリとして「千代折紙」と「ORIGAMI-I(オルガミ)」というのがあるとツイートされていたのを読んで試してみることにしたのだった。「千代折紙」の方はアップローダからのDLに失敗してしまったので「ORIGAMI-I」(ver.0.91)の方をDL。
dic.nicovideo.jp
soundcloud.com
「折り紙大好き!」をカバーしてもらった(自分で打ち込むんだけど、人の声を使わせてもらう気持ちが強い)。一応一音ずつ調声作業をしたが、基本的なピッチ曲線と要所のエンベロープくらいで、あまり細かい設定には手を出していない。ウィスパーボイスということもあって、オリジナルとはかなり異なる雰囲気となってくれた。
Affinity Designerでの折り図制作TIPS その4
affinity.serif.com
Affinity Designer含めAffinityシリーズが5/20まで半額セール中だ。その販促というわけではないけど、ちょっとたまってきた小ネタをまとめた。
後ろに隠れているオブジェクトの選択
optionキー(Winならaltキー)を押しながらクリックするとそのクリック位置にあるオブジェクトを手前から奥へと順に選択していくことができる。例えば、ずらした部分の間の層だけ選択したいときなどに、手数は増えるけれども、狙いを定めてクリックする必要がなくなる。
便利なダブルクリック
- 内側にペーストされたオブジェクトの選択はcommand+クリック(WinならCtrl+クリック)で行えるが、ダブルクリックでもできる。そして内側にペーストされているのが「グループ化されたオブジェクト」の場合、ダブルクリックでグループ全体を選択することができる(さくBさんに教えてもらった)。部分図で位置の調整をしたい場合や、中身を取り出したい場合(カットアンドペーストで取り出せる)に便利だ。ただしグループ化せずに内側にペーストされているとこれはできないので、その場合はレイヤーパネルで中身のオブジェクトを選択する。
- グループの中にグループがある場合も、ダブルクリックで中のグループを選択できる。
- 移動ツールとノードツールの切り替えはショートカットキー(V、A)で行えるが、ダブルクリックでもできる。移動ツールでオブジェクトを選択してそのオブジェクト上でダブルクリックをするとノードツールに切り替わる。ノードツールから移動ツールにするときは何にもないところをダブルクリックで切り替わる。
- テキストツールから移動ツールへの切り替えも何もないところをダブルクリックで切り替わる。テキストカーソルが出ている状態でうっかりショートカットキーを押すと「v」と入力されてしまうので、ダブルクリックで切り替える方が確実。
ドキュメント解像度に注意
別のファイルからコピペでデータを持ってくる場合、ドキュメント設定の解像度(DPI)が同一じゃないと図の大きさが変わってしまう(当然、線幅も変わってしまう)ので注意が必要だ。解像度の設定はいつでも変えられるので(そのドキュメントにあるのがベクターデータのみだったら影響が出ないはず)コピペ前に揃えるようにする。
これはイラレから読み込んだきたファイルからコピペしたら線幅が変わってしまって気づいた。イラレでも基本は300dpiのようだけど、そのファイルは写真を貼っていたせいで600dpi設定になっていたのだった。
境界線のスケーリング
境界線パネル内にスケーリングというチェックボックスがあるが、これにチェックを入れると、オブジェクトの拡大縮小をしたときに線の幅も一緒に太くなったり細くなったりするようになる。IllustratorやFreeHandでは拡大縮小を行うツール内のオプションになっているので、設計思想的に異なるポイントだ。複数オブジェクト内にチェックがあるものとないものが混在している場合に、まとめて拡大縮小すると、チェックありのオブジェクトのみ線幅が変わるという挙動になる。複数オブジェクトを選択した状態でチェックをオン・オフすることで、選択しているすべてのオブジェクトのチェックを一気にオン・オフできる。
折り図では基本的にあまり使わない機能だと思われるが、図を詰めるレイアウトに変えたい場合などで、「図を小さくする必要があるが普通に縮小するとずらし描写が潰れてしまう」というような際に必要になってくる。
チェックが入ったままだと、うっかり図の修正でオブジェクトの拡大縮小を行った際に線の幅がそこだけ変わってしまうなどの事故が起きるので、使った後は基本的にオフに戻しておくのが良いと思う。
ADからIllustrator(Ai)への書き出し
以前も記事で少し書いたが、その後ちょっと調べた結果の簡易まとめ。CS5での結果であり、しっかりとした検証でもないのでそのつもりで読んでほしい。
EPS
- 良い点=図に関しての再現度が高いまま読み込める
- 問題点1=グループ化がすべて無効になる
- 問題点2=テキストがすべてアウトライン化される
- 問題点3=ADでのアートボードは無効になる
SVG
書き出しオプションパネルの「その他」で詳細な設定として、「変換のフラット化」にチェックする。これにチェックをしないと線幅が部分的に太くなったりおかしなことになってしまう。
- 良い点=グループ化が有効のままで読み込める
- 問題点1=テキストが1文字ずつバラバラになる。詳細設定で「より長いテキストをテキスト範囲」にチェックを入れても数文字単位でバラバラになる
- 問題点2=オブジェクト全体の大きさが大きく読み込まれる(その分、線が太い設定になる)
- 問題点3=ADでのアートボードは無効になる
オブジェクト属性の一括置換
ADにオブジェクトを属性で絞って一括選択する機能がないのは大きなマイナス点で、今後のバージョンで搭載されることを望んでやまないが、現状Aiに書き出して行う他に、Mac版しかないソフトだがVectorStylerでできることがわかった。VectorStylerには、Select Similarという塗りの色や線の太さなどで一括して選択する機能がある。
www.vectorstyler.com
最新ベータ版だとPDF読み込み/書き出しで「オブジェクトの線と塗りの分離」も起きなかった(EPS、SVGだと分離する。Aiの結果と逆で面白い)。ただしPDFでは破線のバット線端がラウンド線端になってしまったのと、テキストが全て文字化けしてしまった。破線については一括選択で簡単に修正可能だ。テキストは元のデータから移植することになる。上の項目でも書いているとおり、テキストを編集可能性の高い状態でソフト間を移るのはなかなか難しいようだ。
以下はADで描いた折り図をVectorStylerでカラー化したもの。ADで同じことをやろうとするとオブジェクトを1つ1つぽちぽち選択していくという非人間的な(汗)作業が要求されてしまう。ただ山折り線・谷折り線をそれぞれで一括選択することはVectorStylerでもできなかった。色を変えてからまたPDFで書き出してADで再度読み込んでもやはり線と塗りの分離は起きなかった(というかこの図もADでPNGに書き出したもの)。
Zoom折り紙談義会(5/10)
新型コロナウイルス危機の情勢下、多人数ビデオ通話システムを利用したオンラインでの折り紙集会が各所で模索されつつ開催されている。折紙探偵団東京友の会の例会の他、萩原元さん・田中幹人さんらの個人運営によるもの、各地の大学サークルなどでも行われているようだ。
母の日キャンペーンでZoomの時間制限が無いそうなので、13時ごろから折り紙談義会でもやろうかな。何人くらいか全然読めないけど参加希望の人はDMください。特に話題も進行も決めてないゆるい感じなので、途中参加・途中退室・裏で作業etc.もOK
— コマツ (@origamiplans) 2020年5月10日
上記ツイートのとおり、Zoomのキャンペーンに乗って折り紙談義をする集まりをやってみた。今までZoomは参加者としてしか使っていなかったので自分でミーティングルームを立てるのは初めてだった。10年ほど前にテキストチャットを使って折り紙談義を5回くらいやったことがあったけど、こういう呼びかけをしたのはそれ以来だ。
急な呼びかけだったが、ぼくを除いて9名の参加があった。13時から始めて、まあ夕方くらいまでかなと思っていたのだけど、結局だらだらと21時まで8時間もやってしまった。もっとも夕方以降まで残ってくれていたのは2-3人だったけれど。話題はあっちこっち飛びながらも一応折り紙の話を主にした。
以下、話した話題を記憶を頼りに列挙した。もう結構忘れてるので抜けているのもいろいろあると思う(あとは、内輪っぽい話は除いている)。話した順番も必ずしもこのとおりではない。
・バーチャル背景で遊ぶ
・折り図作成ソフトの話(Inkscape 1.0の使用感・DIAMOND等)
・折り紙VTuberの話(あやせましたさんの映像がOBSを使った配信スタイルだった)
・マニアックな折り紙愛好家はどうしたら増えるのかという話(きっかけ、深みにハマるために必要なもの等々)
・折り技法を徹底的に親切に解説した動画があるといいよね、という話(英語だとぽつぽつある)
・紙を折るときの運指を丁寧に解説したものもあるといいよね、という話(昔びわさんが部活用に作っていた?資料が良かったけど、ああいうの)
・折り鶴早折りの話(あやせましたさん提案の正方基本形の畳み方が面白かった)
・折り図販売等マネタイズの可能性についての話(最近の動向や将来的な予想)
・森末さんの作風の話(平面/立体、ネタ系/ガチ系)
・韓国フォルダーの作風の話
・お絵かきと折り紙に対する心理的な差(創作目線)についての話
・見立ての面白さの話(ぼくがよく話すネタ:異質なものの出会いとか無作為性とか)
・技法の流行り廃りとそれが作風へ与える影響の話
・skさんの過去作振り返り(展開図鑑賞・考察)
・写真投稿SNSの話(からのFlickr鑑賞)
・VTuberの特性の話(折り紙全く関係なし)
・マジックの話(用語体系の折り紙との比較とか)
こうして振り返ってみると、それぞれにもっと掘り下げられそうな、いろんな話題があがっていた。もっと自分にトークの技術があれば、こういうのもコンテンツ化できるかもなあとは思うが、あんまり頭の回転がよくないので事前に原稿などを用意したりしないと、すらすらと考えを話すのは難しい。そういう才能の登場を求む!(同時にブログとか探偵団マガジンで記事を書く人も求む!)
「ねずみ2」
2019年12月創作
2020年の干支ということでネズミを創作した。ネズミは2003年に15度系で一度作っている。2作目にあたって、前作とは異なる切り口で作りたいと考えた。
komatsu.origami.jp
ちなみにリンク先の解説で書いている「前々から「ねずみを折るならこうしたい」と練っていたアイデア」というのも、今回は全然使っていない。当時考えていたのは「リス」と同路線のリアル寄りの造形だった。
今は、少しシンプルに寄せた「その対象の折り紙的イメージとして今まであまり作られていないようなデザイン」への興味が強い。ただし、漫画的・キャラクター的なデフォルメというよりは、リアルな印象をベースに置きつつ特徴を押さえるような方向性だ。
その点でいうと前作の「ねずみ」も大きい方向性としては変わっていない。そんな中で立てた構想は、
- 目をインサイドアウトで表現する
- 手足は折り出さない
- 耳を大きめに作る
- 22.5度系
だった。最も優先したのは目だ。これまで自分は動物作品で目を折り出すことには消極的なスタンスで来ていたのだけど、前作との差別化や、最近他の方が作る生物作品で目の表現が模索されている傾向があることを踏まえて、目の折り出しを構想のメインに据えた。インサイドアウトの条件は単に不慣れな部分に制約をつけてやりやすくしたいという思惑で、目的も「区分効果」つまり目のパーツを強調して認識しやすくするためだった。ネズミの実際の色の特徴を反映させるのであれば、目よりも耳や尻尾を優先してインサイドアウトする方が自然だろう。最終的にそうすることも視野に入れつつ、目のインサイドアウトを最低条件にした。
さらに条件として「目の内部に入るフチは1本まで」というのを課した。具体的には下図の2つ以外は採用しないという方針である。
これはここ数年の魚作品を試していたときにも考えていたことだが、よくある「T字のフチが入った目」で出てしまう表情のニュアンスが邪魔に感じられることがあるからだ。この辺の感じ方は人によって違う可能性があるが、個人的にはT字の線によって、漫画表現でいう「ジト目」のようなイメージ、あるいは眠たげなイメージが想起される気がする。フチの出方による印象をまとめてみると以下の図のような感じだろうか。T字型の場合の個人的な感覚としては「B>A>C>D」の順にニュートラル度が高い気がする。実際は目の外側にさらにフチが入って、その影響も加わるのでもっと複雑だ。
正方形のインサイドアウトでいうと次のようなパターンもおなじみだが、もちろんこれらも今回は採用しない。
フチの入らない目の先行作品などはあまり調べず創作にかかったが、勝田恭平さんの「シマエナガ」と「うり坊」は記憶にあって、まずはそれらとかぶらないような折り出し方を試すところから始めた。
試作というかアイデア出しの断片の中から一部。
これらの「フチが全く入らない目」でちょっと行き詰まったため、フチが横に1本だけ入るパターンに進路変更した。
いくつか試した中からこのパターンを拾って、なんとかネズミの形に持っていったものが次。
しかし納得いかないところばかりだ。
- 耳〜頭の上の隠し折りが厚いためエッジが甘くなる
- 肝心の目の折り出しだが、紙がずれやすく余計な裏が見えてしまう
- 体に余計な折りフチが入る
- アゴの下のフチが口のように見えてしまう
何度か折って改修も試みたがうまく行かなかった。今回一番時間がかかったのがここだった。さすがに諦めて、なにか全く別のやり方に変えようと決心する。ここで頭に浮かんだのは、夏に作った「タピオカミルクティー」だった。
紙のカドからタピオカを折り出した方法をそのまま使ってみるかと思ったのだ。
早速紙をとっていじってみた。
カドが顔の下に隠れているのを引き出す必要があって、結果「T字型の目」になってしまってはいるが、上のような形を手にできた。基本アイデアとしては、ネズミ作品では定番的と言える「正方基本形の半分を顔面と耳にする構成」に目となる用の紙を付加するというものだ。
良い感触なので構造を確認して改めた次の試作が、完成版の基本構造となった。1つ前の試作に取りかかってから30分もかからないくらいで、まとまるときは自分でもよく分からないほどあっさり行ってしまうことがままある。とは言っても、これまでの検討が無ければおそらく手にすることはできなかっただろう。できてみて「そうそう、こういうのが作りたかったんだよ」となるのは、偶然性が混入する折り紙創作の面白いところだ。
一旦Twitterにアップして、その後折紙探偵団東京友の会例会でも発表したが、ずっと迷っていたのが耳の処理だった。
上の写真のとおり最初は耳の先を尖らせていて、これはネズミを正面から描いたイラストなどから漠然と持っていたイメージをさらにデフォルメしたつもりだったのだが、よくよく見なくとも実際のネズミの耳は丸い。正面などから見たときにカーブの曲がり部分で尖っているように見えるだけだ。というわけでカドを削ることにしたのだが、このときどれだけ削るのか、そして耳の根元の段折りとどう整合性を取るかというところでかなり悩むことになった。最終的に選んだのは、誤差はあるが工程で目安が取りやすいものになった。
作例は、折り紙用紙に自作テクスチャを印刷したいつものものだが、ちょっと面白いのは、テクスチャは同じ色で印刷したのに折り紙用紙の裏写りのせいで色味がだいぶ異なっている。
展開図。最後におなかをひろげて立体化する。このとき内部の紙がS字状にゆがむ。まだ折り図を描いていないけれど、この工程をどう説明しようかなあと考えている。