Affinity Designer 1.7の機能に関する追記

普段はIllustrator CCで折り図を描いている萩原元さんが、ADから書き出したEPSのAi CCへの読み込みをテストしてくれた。それによると、

  • アートボード上のオブジェクトの位置が(下に)ずれる
  • グループ化が無効になる
  • 内側にペーストで入れ子にしたときに線と塗りの分離が起こる

ぼくが持っているのはCS5だが、こちらでも検証してみた。

アートボード上のオブジェクトの位置が(下に)ずれる

これは表題のとおり。トンボなどをつけていればAiの方で直すのは容易だからまあ許容範囲と言ったところ。

グループ化が無効になる

ファイルを開くと、全オブジェクトがグループ化された状態で開かれるが、そのグループ化はADではしていない物。それを解除すると全オブジェクトがバラバラになってしまい、ADで実行していたグループ化が全て無効になるようだ。グループ化の入れ子をしても全部が解除されていた。
これは結構問題。特に部分部分をグループ化して作業する人はかなり困るだろう。

内側にペーストで問題あり

内側にペーストについてはどうやら入れ子かどうかは関係なくて、「クリッピングマスクの形状と同じ形状のオブジェクト」で「線と塗りの分離」が起きるみたいだ。それ以外の中に入っているオブジェクトは分離しない。
部分図だと外枠の円に塗りがないからそもそも分離が発生しないけど、仮に塗りがあると分離する。入れ子でもクリッピングマスクが1つだけで済むような場合は、何段の入れ子でも中身は無事となる(つまりは、そもそも入れ子にする必要がないケースということだが)。

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クリッピングマスクが1つで済む場合ならADで何段の入れ子でも中身については分離は起きない
いずれにしても、影の描画などには内側にペーストは使えないということになり、これは個人的には結構痛い。透視図での使用もひっかかるが、それくらいなら分離してても大問題にはならないかも。
影の描画は野暮ったい方法ではあるが、輪郭線だけさらに重ねればいい。影がフチに接しないのであればそれも不要で、こちらで済むケースの方が多い。ぼくも初期はこれでずっと描いていた。分離と大差ない気もするが、自分で意識的にやっているので気分的にましな気がする。
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紙のフチに届く影の描き方(原始的な方法)
ちなみにレイヤーで「下のレイヤーにマスクを使用」コマンドでクリッピングを行うと、EPS書き出しでは中身がラスター画像になってしまったので、これは折り図制作では使えない機能だった。


そして以下は、新しく判明した機能上の問題点。

△反転機能が弱い

△としたが、×よりの△。反転が上下・左右だけしかできず、しかも反転はその場でしかできない。反転軸の指定などはできない。
折り図では折り返しの作図や、片側だけ作図したものを反転させて全体を作図するなど反転機能を多用するので、かなり問題になる。反転後の位置合わせや、傾いた軸で反転させたい場合などに、製図的な正確さで実行するのは困難となる。ぼく自身はFHで反転軸のクリック指定を目視でやってしまうので、あまり厳密に反転させたりはしないのだが、気になる人は困るだろうな。
(垂直・水平線での反転であれば、反転軸を作図しておいて、反転軸込みで反転させ、グループ化した上で元の反転軸に対して整列して、反転軸を消去するという方法で、一応正確な作図が可能ではある)

△内側にペーストの解除が即座にできない

内側にペーストされたオブジェクトが少なければ、選択してカットアンドペーストで取り出せるが、部分図などの複雑な図だとそうもいかない。
いざ中から取り出そうとしてコマンドに載っていないので「まさかできないのか」と焦ったが、一応レイヤーパネルから「中身のレイヤー」(※外枠の方ではない点に注意)のところを右クリックして表示されるメニューから解除を選ぶと、内側にペースト前の状態に戻るようだ(ユーザフォーラムを探してようやく判明した)。中身がグループ化されていないと、1つ1つのレイヤーに対して解除を選択しないといけなくなるので、内側にペースト前にグループ化は必須。まあ部分図を作る際は間違いなくグループ化してるから問題にはならなそうだが。
ちなみにFHでは「内部にペースト」とセットで「内容を取り出す」コマンドがちゃんと用意されている。