後半身から作る
他の作家と創作法について話していたりしていて、時々、後半身から作品を作り始めるという創作手順を不思議がられることがある。どうもそういう人は少ないみたいだ。そういや、ぼく自身いつごろからこの作り方を積極的に採用するようになったのだろうかと思ったので、自作の動物作品を分類してみた。
作りはじめた部位 | 作品名 |
頭から | 馬、カバ、猫 |
前足から | リス、うさぎ、キリン |
後足・尻尾から | ライオン、犬、ポニー、ひつじ、オオカミ |
全体が一気に | 狐、トラ、パンダ、ねずみ、(日本猿) |
(「日本猿」がカッコに入っているのは、この作品は試作から完成に至る間に総ての部位を折り変えてしまったため、どの部分から作ったかはっきり言えないので)
こうして表を見ると「ライオン」がターニングポイントのようだけど、いかんせんこの時期はひどいスランプ状態だったこともあって、判断がつかない部分があるというか、正直よく覚えていないのだった。‥‥S太郎さんとこのSTR掲示板に、臼田さんの「ヤベオオツノジカ」が投稿されたのはこれと近い時期だったかなあ? 「ヤベオオツノジカ」は後足の造形に力が入っている作品で非常に印象的だった。なんとなく関連がありそうな感じもする。
さて、後半身から作ることによる利点だが、そのひとつは創作における偶然性と関わっている。
「後足・尻尾から」の欄に並んだ5つの作品のうち「犬」「オオカミ」を除く3つは、あらかじめテーマを決めていない状態から創作を始めている。創作法としてはなんとも頼りない限りだが、このように漠然と折ることで、「見立て以前の面白い形・構造」を探すという意味がある。
最初から目標の造形を目指して作り始めれば、自然と思考も造形メインに考えるようになる。すると、目標を早くに達成するために、つい既知の構造を使ってしまいたくなりがちだ。しかしそれでは、新しく素敵な構造を取り込む機会を失うことになりかねない。持っている「折りのボキャブラリー」によって作品の幅が決定されてしまうという問題が生じるわけだ。
しかし反対に、面白い形をただ闇雲に探して、全くの偶然に頼ってしまうと、今度はどのような作品がいつできるか分からなくなる。それでは余りに心もとないので、ある程度は、見立てへの繋がりを確保しておきたくなる。
このような意味で、動物の後半身というのは、漠然と折り始めるためのとっかかりとしてちょうど良いように思える(少なくともぼくにとっては)。後半身には大きな特徴が少なく、尾が長いとかそういうレベルさえ満たせば、動物同士での見立て互換性があると見なせる。具体的に言えば、「長い尻尾」という条件のみを満たす範囲で面白いかたちを探している段階では、ネコにもなりうるしキツネにもなるかもしれない。手にする構造を見立てにすくい上げる機会が広がるわけだ。頭部から作るとなると、このような芸当は難しいだろう。
(つづく)