「花衣」レビュー

コンベンション直前に竹尾に行ってみたら新製品がいくつか出ていた。そのうち、5月発売の「花衣」という紙に非常にそそられるものがあったので思わず全色購入。

リンク先の解説にあるように、フランス製の極薄トレーシングペーパーとのこと。
トレーシングペーパー(以下トレペ)と言えば、紙に凝り始めた折り紙者にとってはトラップとなることでおなじみの(?)紙で、折る前の見た目はすごく綺麗でも、折ると折り筋がくっきりと白くなるわ、がさがさして折りにくいわ、重なってくると凶器並みに硬くなるわ、と基本的に折り紙には向かないことが多い。ぼく自身、トレペ系と知らずに「クロマティコ」をうきうきと買ったりしたのち凹んだなど、この罠にかかって悔しい思いをしたことが何度かある。

厚さ

しかしこの「花衣」は伊達じゃない薄さのおかげで、折ってもほとんど折り筋の白さは目立たないし、がさがさ感も抑えられている。その薄さは11.3kg、ただし全紙サイズが特殊で500×750mmとやや小さめ。折り紙向きの薄い紙としてよく知られる「カラペ」(11.3kg)と同じ菊判(636×939mm)に換算すると、花衣は18kgくらいになる。


なにしろ後ろが透けて見えるほどの薄さで、紙同士が重なると色が濃くなる。紙の重なりに大きくムラのある作品には向かないだろう。基本的にはカラペと同様に、昆虫やミニチュア折り紙向きだと思う。

作例

試し折りとして、神谷哲史さん作「メタリフェルホソアカクワガタ2.0」(『第12回折紙探偵団コンベンション折り図集』)を折ってみた。使用サイズは大体30cm四方(だったと思う。メモっておくのを忘れた)。
先に全体的な感じを言ってしまうと、折ったときの感じは、トレペというより、グラシン紙やパラフィン紙に近い雰囲気だった。
http://origami.gr.jp/~komatsu/image/blog/hanagoromo-sample.jpg
仕上がりはこんな感じに。これ、糊を使わずに仕上げているのだが、この事実だけでも結構伝わるものがあるのではないだろうか。(ちなみにオレンジと変な色なのは、この作品を折ったコンベンション会場に切って持っていったのがたまたまこの色だったため)


トレペ系は折ったときの紙の戻りが少なく、これはホイル紙やカラペなどと同様にコンプレックス作品を折るときの強みになるわけだけど、その分Sinkなどの「折り目を逆に直す作業」が難しくなる傾向がある。しかし、実際に折ってみた限りでは、当初の予想よりは扱いやすかった。作例モデルには、裏から指を入れられない状態でフチをつぶしたりする工程もあったものの、これも紙にコシがある分、比較的イライラせずに折ることができた。

色数

13色はこの手の紙にしては多目と言えるだろう。カラペの30色にはかなわないけども。どの色も割合落ち着いた、使いやすそうな色だと思う。色の再現は難しいが一応写真も。
http://origami.gr.jp/~komatsu/image/blog/hanagoromo-color.jpg

欠点

何度も折り直したりしていると、表面が白くはげたようになってくることが、折っていて気になった。これは「やっぱりトレペか」といったところ。こうなってしまうと、もともと微妙に安っぽさを感じるのがさらに強調されてしまって、展示作品用などにはきつくなるかもしれない。ただ、技術次第でなんとかなりそうな欠点でもある。

まとめ

多少のクセはあって、折る対象も選ぶ紙だと思うが、折り紙用紙として「使える紙」であることは確かだと思う。特に、「カラペはコシが足りなくてうまく折れない」というような人は一度試してみる価値があるのでは。また、すでにグラシン紙を愛用している人には、花衣の色数の多さはお薦めできると思う。
竹尾以外で入手可能かどうか定かではないのが問題か。